2016年3月21日月曜日

拳闘家×音楽家 ―第1部 実践―

記念すべき第1回目のゲストは、ミサコボクシングジムチーフトレーナーの加藤健太さんとピアニストの佐藤美和さん。

 お二人ともボクシングトレーナーとピアニストを生業とするプロフェッショナルです。 企画者3人が連絡をするたびに「すごく楽しみです!」と言い続けていたため、余計なプレッシャーをお二人にかけていたという配慮に欠けた(?)状況の中、果たしてどのような展開になるのでしょうか?

佐藤美和さん/加藤健太さん

会場には総勢25名の予想を超えたたくさんのお客さんが来てくださいました!
来場者は音楽家からボクサーに始まり、看護師さん、大学生、編集関係、会社員の方などさまざま。


今回の司会を務めた磯野による人類学的的な身体の見方についてのイントロダクションの後に、「第1部-実践編―」の開幕です!



「プロとして一段レベルが上がったと感じた瞬間は?」

これは企画側がぜひとも聞いてみたいと思っていた質問の一つ。仕事でもスポーツでも、自分のレベルが上がったという実感があるはずです。プロはどんな瞬間に自分のレベルの向上を感じているのでしょうか

まず質問をふられた佐藤さんが、会場が「へーっ」とどよめく解答をしてくださいました。

佐藤さんにとってのその瞬間は、イタリアでのコンクールに出場した際のこと。この時佐藤さんは、弾いている自分を外からもう1人の自分が眺めているかのように、客観的に自分の感情を出し入れすることができたそうです。

それまで佐藤さんは、感情がうまく入ったら大成功、でもうまく入らなかったら大失敗という、「ばくち的」な演奏をしていたそうです。しかしこの時は、自分自身でその感情をどうするかをコントロールすることができた。

これが佐藤さんが、プロとしてやっていってもよいのではないか感じた瞬間だったようです。

ピアニストは役者と一緒で、台本の代わりが楽譜というような側面があるとのこと。音楽にあまり親しみのない人には「???」という佐藤さんのはじめの答えでしたが、佐藤さんのわかりやすい解説で一同納得の開幕でした。
生まれて初めて(演奏中に)自分の感情をコントロールできた


一方の加藤さんは、ご自身の試合動画を使いながら解説をしてくださいました。加藤さんが自分のレベル向上を実感した瞬間は、初めての負けを経験した次の試合であったとのこと。

デビューしたばかりのころの加藤さんは、試合前に作戦を考えていても、ゴングが鳴って相手と実際に拳を交えると、一種にしてそれを忘れてしまい、とにかく近づいて殴るといった、相手が何をしているかはほとんど考えられないという試合が続いていたそうです。

しかし敗戦を挟んで迎えた試合では、「この態勢であれば相手はこのパンチしか出せないはずだから、それが来たらディフェンスをして打ち返そう」という一瞬の判断がありました。

写真がその瞬間の動画。早すぎてよくわからないので、スロー再生にして解説をしてもらい、はじめてそれがどういうことかわかりました。佐藤さんと同様に、素人が観ていたら絶対にわからない瞬間のお話です。

ご本人の動画解説付きでその瞬間を会場も一緒に体験

お二人の話を伺って思ったのは、活躍する領域は全く異なるにもかかわらず、レベルが上がった瞬間には「感情」であるとか、「自分とは異なる他者」であるとかいった、それまでどうにもならなかったものが「どうにかなった」体験をお二人ともされいることです。

自分は演奏や試合の紛れもない当事者であるにもかかわらず、それに飲みこまれるのではなく、自分が置かれた環境を積極的にコントロールしてゆくこと。

これはどのプロフェッショナルにも共通する重要な体験なのかもしれません。

みなさんもそのような体験をしていることがあるのではないでしょうか?

このお話し以外にも、重心の作り方などプロの実践を大変わかりやすく、そして楽しく解説してくださり、会はそのまま2部の「指導」に入りました。


 おまけ

会場になったテンプル大学は、港区にあるのに全部英語で授業が行われるという大学。構内は英語だらけで、日本語だからポスターが目立つというプチ海外な状況が起こっていました。 


日本なのにオンリー・ジャパニーズなカフェのポスター